近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
間違いない…
あのドレスは、パリのショーウィンドーから眺めたウェディングドレスだ──…
抜け目ない…
頼りないように見えて、実は正確に仕事をこなす。
それが、秘書の酒田だ…
だんだんと近付く真希に、光瑠は優しい視線を送っていた。
そして、ようやく目の前まで来ると、真希の父は、緩い笑みを二人に見せて、真希を光瑠に引き渡した。
「………光瑠さん…」
「……よく…似合ってる…」
「光瑠さんも──」
そう言いかけた、真希は、う…ん…と言葉を飲み込んだ。
「まぁでも…いつも白いスーツ姿なので、全然いつもと違う感じがしないかも…」
真希の指摘に、フッと光瑠が笑う。
段々と音楽が小さくなって、やがて消えると、目の前の牧師が咳払いをした。
ペラペラを言葉を話す牧師の口元を見ながら、光瑠は過去のことを懐古する…。