近くて甘い
第60章 卒業と、それから…
母も
父も
婚約者も
この世から去った──…
もがいてももがいても、闇から抜け出せなかったあの頃…
金と地位だけが残って
心の穴が埋まることはなくイラつく毎日だった。
その時に突然現れた真希が、世界を変えた──…
婚約者に似ていたから…。
始めはそんな浅はかな気持ちで惹かれていたのが、段々と真希自身に惹かれていた。
誰も自分を怖がって楯突いては来ないのに、真希だけは違った──…
もどかしくて…
気持ちを言葉にすることが出来ないまま、どれだけ真希を傷付けたか分からない…
「………誓います…」
牧師の問いかけに、真希が応えた。
色々なことがあって…
その中には堪え難いこともあったが…
今、こうして、彼女は、自分の隣で、自分の妻になろうとしている…。
「誓います…」
光瑠もまた、真希と同じようにその問いかけに応える。
愛する人と愛し合えること…
どれだけ幸せなことなのか…
様々な悲しみを乗り越えたからこそ、その重みが分かる。