近くて甘い
第20章 万能の王子
「文句があるのかな?」
下っ端の下っ端。
拒否するなんてことは…
「まさかっ!了解しましたっ!」
あり得ないのだ───
「頼んだよ…」
わざとらしく手を降って去っていく上司。
その隣で、藍が、ごめん…と呟きながら、背中をさすった。
「ぺちゃくちゃしゃべってたから狙われたんだね…」
「最悪だよぉ…」
「ごめん…私も悪いし、手伝うよ…」
優しく言葉を掛けて来た藍のことを加奈子はジッと見つめた。
しっかりものの藍は、自分のように上司に意地悪されることも少ない。
「大丈夫…私が頼まれたんだし」
「でも…」
きっと、私がドジだから…舐められてるんだ…
「私も出来るんだって見せてやりたいからっ!本当に大丈夫っ!」
ガッツポーズをしてみせた加奈子に藍の不安は拭えない。
彼女のドジぶりは今さら治せるようなものではないのだから…