近くて甘い
第21章 チョコレートは魅惑の味…
有り得ないっ…
男だったら絶対に私の事を抱きたいと思うはずっ…
イライラしながら過ごしていたある日
、香純のプライドが今まで以上にズタズタになった日があった。
それも、熾烈なお茶汲みジャンケンに見事勝利を納めたある日のことだった。
身なりを整え…いや、乱し、社長室へ入ろうとしたのだが、扉が少し開いていたので、軽くノックをしようとした時───
「あれ…?これって…」
「ん?あぁこれはさっき教えた公式の方だ」
「ああ!そうか!」
聞いたことのない女の声…
眉をしかめた香純はノックをやめてこっそりと中を覗いた。
光瑠の椅子に座る黒髪の制服を着た少女──
立っている光瑠はその少女が座っている椅子の背もたれに手を乗せながら、彼女の手元を覗き込んでいる。
あれは一体だれっ…!?
見た感じでは高校生だ。
そして何より気になったのは、他では見た事のない、光瑠のその少女を見る優しい眼差しだった。