近くて甘い
第22章 疑惑の二人
勝手に動き出した足。
もう止まらなくなった私は、自分が制服を着ていて、どう見たって子どもであることを忘れて、その場所に近付いて行った。
立ち止まって大きく息を吸った。
大人だろうと、子どもだろうと間違っているものは間違っているんだからっ!
「そういう言い方はっ───」
「────Dの発音がなってないな…」
へ?
私と同じように来たのか、要さんが私の言葉を阻んで、その少し太った田部さんの上司に言った。
「ふっ副社長っ…」
その人は目を丸くして、状況を把握しようともがいている。
要さんは、その脇で呆然とする田部さんを庇うようにして立った。
「君のその発音じゃあ、BとDを間違えても仕方がない。
書類も、僕が自分から拾ったんだ。別に彼女が頼んできたわけじゃない…」
「っ……」
「それに、本当に誰に責任があるのかを考えると、身体の小さい彼女のあんなに書類を持たせた君にあるんじゃないかな?」
あくまで笑顔な要さん。
だけど、その分、怖くて、逆らえないオーラがある…