近くて甘い
第22章 疑惑の二人
騒動が治まって、周りにいた人たちが段々と自分の仕事場に戻って行った。
ぽつんといた私は、トイレの方向に歩いていく田部さんを追いかけて、声を駆けた。
「へっ…社長夫人っ!?!?!?」
「っ…そんなっ…真希でいいですっ…」
「えっでもっ…」
「お願いしますっ…」
手を合わせると、田部さんはゴクンと唾を飲んだ。
「確かに…高校生なんだったら年下だし…」
「そうですよっ!」
あはっと笑った彼女の表情がとても素敵で、何故か目が離せなくなった。
「じゃあ…真希ちゃんで…
私のことも、加奈子って呼んで?」
真希ちゃん…
何となくしっくりくる呼び名…
フレンドリーに接してくれる彼女に心が温まった。
「はいっ。呼び捨てはあれなので…加奈子さんで…」
「あっえっ…はいっ…じゃないなっ…うんっ!」
話すだけなのに一生懸命な加奈子さんは、年上のお姉さんだけど、どこか、助けたくなっちゃうような、かわいらしさがある。
「あのっ…さっきの…光瑠さんに書類を拾わせたのは私なのに、こんな事になってしまうなんて思ってもみなくて…」