近くて甘い
第26章 悪女は転ばない
仕事終わりのある日の夜のこと。
ビール片手に加奈子はポロポロと涙を流していた。
「すごく絵になるキスシーンだったなぁ…」
この前本人の前で強がった加奈子だが、お酒が入ったことにより、どうも涙腺が緩んでしまって止まらない。
「分かってるよ?こんな何の取り柄もないどころか、欠点だらけの私がまっっっったく見込みないことくらいさあ…」
「ほら〜呑み過ぎっ!」
苦笑いして藍が加奈子の酒の呑む手を止めた。
「諦められないなんて、そんなおこがましいことは思ってないのっ…。ただ、好きなのはやめたくないっていうか…っ」
副社長を想っているときって、すごく胸がキュンキュンして苦しいけど…でもとても幸せを感じるからっ…
また涙が溢れて止まらなくなった加奈子のことを、藍がよしよしと撫でる。
その向かいで、香純は、要と真希がキスをしたという情報に目を輝かせていた。
だけれども…
「あの男のどこがいいんだか、まじで分かんないわ…」
とんでもなく頭が良くて、抜け目がないことは分かっていたことだが、
あの絶好のチャンスに藤木真希を抱かなかったなんて、本当に使えない…
「ちょっと!香純!そんな風にいうことないんじゃないっ!?」