近くて甘い
第26章 悪女は転ばない
あまりの心ない言葉に、藍が思わず声を上げたが、香純はツンとしたまま、グラスの氷を指で回していた。
「私はあの人には全く男を感じない」
「っ…ねぇ香純いい加減にしなよっ!今日は加奈子を慰める会で──」
バカバカしい…
あーだこーだと説教してくる藍の口元を見ながらも、話は右から左…
香純の頭の中は、次の作戦でいっぱいなのだ。
それでも、
キスしてたってだけじゃ、やっぱり情報が弱い…
───────今度虚偽の報告をしたら、お前を首にする
もう軽はずみには動けない…
何かないか…二人をどうにかして切り離す、いい方法が…
「でもねっ…私何かよりも副社長の方が断然に辛いんだと思うの…」
「う…ん…。
それにしてもさ…あの二人から想われてなんて、本当にその…真希ちゃん?ってすごいよね…」
関心した様子の藍に香純は不機嫌そうに、コップをテーブルに叩き付けた。
「何であんな貧乳のガキが社長の婚約者なのか意味が分からないっ…」
あの娘のどこにそんなに魅力があるのか…
手鏡を出した香純は髪型を整える。
この美貌で今までどんな男だって落として来た。
なのに今、高校生にどうしようもなく手を焼いている自分に腹が立って仕方がないのだ。
「…私は分かるよ〜?だって…真希ちゃんって私も惚れちゃうくらい、いい子で、かわいくて…でも芯があって強くて…」
「加奈子、黙らないと殴る」