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近くて甘い

第27章 キスの責任

「新入社員のくせにあまりでしゃばるなっ!」




グッと香純に迫った光瑠。



唇を噛んだ香純は、ボロボロと涙を流す。


もちろんその涙が演技であることに、動揺する光瑠は気付かない。




「“今回の事は”噂で聞いただけでっ…」



「何だその言い方はっ!今回も何もないだろがっ!この前の事だって結局お前のデタラメで───」


「デタラメなんかでは…きゃっ!」



「社長っ!」



意見を押し通そうとする光瑠はついにキレて、香純の手首を掴むと、慌てて要がその間に入った。




「関根っ!何故かばうっ!」


「っ……」



口を結んだ要は、かすかに震えた。



これ以上にない罪悪感に、何も言葉が出ない…



要に庇われた香純は嘘の涙で頬を濡らしながら、またほくそ笑んだ。



要の手が、勢い付く光瑠の胸に当てられている。



お人好しにも程がある…



光瑠は要が真希を想いながらも身を引いたことを分かっている。


そして信頼する部下だからこそ、その香純の戯言に腹を立てていた。



光瑠はつっかえているその要の腕を掴んで、要を見つめた。



「お前は、こんな何も知らん社員にあることないことを言われて──」


「申し訳ありませんでした……」



言葉を遮りながら、俯いた要の小さな呟きに


光瑠は目を見開いた。




申し訳ありませんでした…?




「…………それは…どういう意味だ」



「…彼女の言う通りです……」


「────…」


「彼女の言う通り…僕は…」




何を言っているんだ?


顔を下げたままでいる要の頭を、眺めながら、光瑠は頭の整理をしていた。

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