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近くて甘い

第28章 信頼の崩壊…

━━━━━━━━━…

自分の言葉を遮った真希の事を、光瑠は見ている事が出来なかった。



無理矢理要がキスしたのなら、まだどうにかなると思っていたのに、そうではないと聞いて、あまりにもあっけなく、真希への信頼が崩壊した。



誰にも触れさせたくないと言ったはずだ───



しかも相手は要…



最悪の状態にどうしようもなく光瑠は苦しむ。




「あれはっ…私が要さんのことを無意識に傷付けてっ…それでっ…


要さんは決して無理矢理するような人じゃなくて…っ

でも身体が動かなくて…だから要さんのせいじゃなくてすべて私のせいで…」




焦ったまま言葉を羅列する真希を光瑠は目を見開いて見つめた。




──────────真希さんは悪くありません…




あいつと同じことを…




「…………近付くな…」



「待ってっ…光瑠さんっ…」




いつもいつも感じていた要に対する劣等感…



出会ったのも、恋に落ちたのも…
何もかも要が先だ────




「寝室はお前が使え…っ」



「っ…話を聞いてくださいっ!」





もしも…




もしも…



あの晩、光瑠が要を呼ばなければ…



もしも…



要が目が見えなくなったりしなければ…




部屋を出ようとしたのを、真希に阻まれて、光瑠は切なげに真希を見つめた。




今すぐにでも抱き締めたい…


愛しくて…



だからこそ…




「俺に触るなっ…」


たとえキス一つでも、
今回の裏切りが耐えられない──…




「っ…」



心がぐらつきそうになりながらも、ブンと振り切った光瑠はそのまま部屋を出て廊下を歩いた。



「関根に抱かれたいなら、抱かれればいい…っ。俺に遠慮する必要はないっ!」



「っ…………そんなこと一言もっ…」





真希の声を聞きながら光瑠は、勢いよく部屋の扉を閉めた。










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