近くて甘い
第29章 Little sisters!
切なく放った要は、顎に手を当てた。
「…なら、奪ったら?」
「…お前なぁ…」
自由奔放な沙羅の言葉に要は溜め息をつく。
「だって、その真希さんって人の幸せを考えるんだったら、絶対要と一緒にいた方がいいもん!」
「そういう問題じゃない。
彼女が想っているのは、社長なんだし、それにこれ以上社長の信頼を裏切るような事は──」
「あ!」
言葉を遮った沙紀は、要の頬を楽しそうに突いた。
「今度はなんだ…」
「やっぱり有川社長のことも気にしてるんじゃん!」
「……」
「彼女だけの幸せを考えるなら、信頼を裏切るとかどうでもよくない?」
何も言葉を返せずに固まった。
「それにね、そんなライバルの下で働くなんて、その人の事が好きじゃないと出来ないと思うよ?」
この前まで、ただの子どもだと思っていた二人が、核心をついてくるのが、なんだから要は面白かった。
「………早く掃除を済ませないと、もう泊めてやらないぞ」
「「え〜〜!」」
この方がいい…
本気で慌て出す二人の妹を見ながら、要は、遠くを見て、小さく息を吐いていた。