近くて甘い
第29章 Little sisters!
「その彼女のことも大切だけれど…
有川社長のことも大切なんだね」
「………」
思ってもみなかった沙紀の言葉に、要は固まった。
「だからこそ、その大切な彼女を有川社長に託したんでしょ?」
「……別に託した訳じゃ…」
ただ選ばれなかっただけ…
それだけの事…
「そうだよ。
だっていくら拒まれたって、その彼女が変な男の元に行こうとしたら要は止めるでしょ…?」
「それは…」
考えたことのないことだった。
目が見えなくなっても、探し続けたあの雨の日の少女…
生まれて初めて、胸が高鳴ってどうしてももう一度会いたかった…
苦しいほどに想い続け、やっとこの腕に抱き締めたときには、彼女の心はもう僕には無かった──…
やはり
身を引いたのは、真希さんのためだ。
もし社長のことも考えていたのだとしたら、
僕は、キスなんかしなかったはずだ───
「真希さんの…幸せを考えただけだ…。
社長は関係ないよ…」