近くて甘い
第30章 初恋の人
何をしていても溜め息が出る。
おもしろい授業があって、笑いが零れても、笑ったあとに、すぐに空虚な気持ちになって、心から笑えなかった。
光瑠さんと話さなくなってから、もう3日ほどが経っていた。
要さんともまだ話せていないし、
加奈子さんにだってまだ謝れてない。
どんよりした気持ちが続いたまま、私はボーッと椅子に座って校庭を眺めていた。
「藤木っ…」
「……吉岡くん…」
私の机の前にしゃがみ込んだ吉岡くんは、暑いのか、顔を紅くしながら、私の事をチラチラと見てきた。
「あのよぉ…っ」
「何?」
「えっと…大丈夫かっ?」
「え…?」
突然の質問に、びっくりして吉岡くんを見た。
「なんで?」
「なんでって…藤木なんか最近元気ねぇし…」
バレてたんだ…
「そんなに…分かりやすい?」
「いやっ…えと…分かりやすいって訳じゃ…でも、なんて言うか、溜め息が多いかなって見てて思うっていうかっ…」
しどろもどろでそう言った吉岡くんはさらに顔を紅くさせて、大きく手を振り出した。
「いやっ…あの、見ててっていうのは、特に深い意味はねぇから!常識の範囲内で見てるだけだからっ!」
なにそれ…
「ふふっ…意味分かんないよっ…」
思わず笑いながら、そういうと、吉岡くんは、照れたようにして頭を掻いていた。