近くて甘い
第31章 if...
「……どうした…?」
「……あのっ…病気の母と8歳の弟がいてっ…それでっ…」
今にも泣きそうなその声に、要の胸が締め付けられる。
どうして彼女はこの年齢で、
こんなにも色々な物事を一人で抱えているのだろう…
いや、だからこそ、彼女からは“生きよう”という力を強く感じるのだろうが…
「……大丈夫だ…」
「っ……大丈夫なんかじゃないんですっ…要さんが下さったお金は借金取りにすぐに奪われてしまって…
それでっ…私は為す術がなくてっ…
夜のっ…夜の街に──」
「もういいから…」
苦しそうに話していた真希の言葉を遮って、要は、優しく呟いた。
「……一緒に…問題を解決しよう…」
「っ……」
「だから…大丈夫だ…。もうそんなに一人で抱え込むな…。俺が…俺がいるから…」