近くて甘い
第31章 if...
その名を光瑠が発すると、真希の身体が、微かに震えた。
「…桜子…?社長…彼女の名前は───」
「有川様っ…」
隣で動揺しながらそう叫んだ真希の声を聞いて、要は眉をしかめた。
何がどうなっているんだろうか…
「何故突然消えたっ…!」
「痛いっ!離してっ…」
空気が変わった事を要は察知しながら、真希の声を頼りに足を進める。
「社長っ!? 何がどうなっているんですかっ…真希はっ…」
心配そうに尋ねる要の言葉は光瑠の耳には入らない。
真希の手首を掴みながら、光瑠はただただ真希の事を見つめていた。
手に入れたい…
どんな手段を取ってでも、悠月に似たこの少女を…