テキストサイズ

近くて甘い

第34章 企てとすれ違い

完全に打ちのめされている様子の光瑠のことを眺めながら、香純は不機嫌そうに、目を細めていた。



あの小娘が自分のもとからいなくなった程度でこの落ち込み方は気に食わない───



せっかく、冴えない男にキスまでしてこの密室で二人っきりという状況を作り出したにも関わらず、このまま時間を無駄にするようなことはしたくない。




「社長…」




まぁ、待たなくても…さっきお茶に仕込んだ媚薬がそろそろ効き始める頃だ───



光瑠と同じように隣に座った香純は誘惑のモードに入っていた。





「社長には、もっとふさわしい女の人がいますよ…」


「っ……」





香純の言葉に、光瑠は少し上を向いた。




別に女が欲しいわけじゃない…っ



出会ってから、いつも抵抗ばかりする真希からどうしても欲しかったのは




心だ───…






一方通行でも構わなかったはずの関係だったのに、気付けば何もかも欲しいと思っていた…。




未来など見る事すらやめた中に現れた…輝かしい“希望”…




ぼんやりと、真希の幻影が目の前に現れて、光瑠はそれは愛しげに見つめた。


身体が異様に熱を帯びる…





もう手遅れだ──



真希の幸せは願っているが、



それを純粋に応援してやることが出来ほいほど強く想ってしまっている…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ