近くて甘い
第34章 企てとすれ違い
これほどまでにあっけないとは思わなかった…
光瑠の胸を数々の思い出が締め付ける。
“愛してる”と何度言っただろう…
とめどなく溢れる想いに口にせずにはいられなかった。
無防備で、誰にでも優しい真希に幾度となくヒヤッとさせられては、何度も真希の気持ちを確かめて、自分を安心させていた。
なのにっ…
「とても薄情ですねぇ…。真希さんって…」
すり寄るようにして近付いてきた香純のことを払う気力も光瑠にはなかった。
夢でみた二人の幸せな姿が、ついに夢ではなく現実になる───
それがあるべき姿…
自分は二人の純粋な想いを邪魔した者に過ぎない…
「っ………」
真っ暗なエレベーターにもたれながら、光瑠は、ズルズルと身を下ろしていった。