近くて甘い
第35章 交わらない想いと出発
「はぁ!?!?」
声を上げた光瑠を要と加奈子が眺める。
「バカな事を言うなっ!俺がそんな事をするわけが──」
「冗談ではありません…」
「私も…私以外の人たちも見てました…」
全く身に覚えの無いことに、光瑠は戸惑いを隠せない。
エレベーターに乗っていたら、電気が落ちたのも、真希の電話も覚えているが、それ以降の記憶が欠落したまま、気が付いたら会社の医務室で眠っていた。
そして、新入社員の櫻井と熱く絡み合っていたと、信じ難い情報に、ついていけない…。
「何がっ…どうなっている…っ」
「多分…櫻井の仕業です…」
「櫻井の?」
訳が分からぬまま、光瑠は要を見つめた。