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近くて甘い

第35章 交わらない想いと出発

━━━━━━━━━…



扉に手を添えた光瑠は、額を付けて、グッと歯を食いしばった。



すぐそこに彼女がいるのに、中に入ることが出来ない…。



いつもいつも拒否されて、彼女は心の奥を自分に晒そうとはしてくれない。




また…




また…愛する人を手放さなければならない───



やっと掴んだと思った幸せのはずだったのに。





何度名前を呼んでも返事はない──…




─────────もう顔も見たくありませんっ…



─────────パリに行って…っ、そのまま帰って来なければいいのにっ…





俺が消えれば…


すべては丸く収まって…


こいつは幸せになるのだろうか───





ゆっくり扉から手を離した光瑠は、ジッと扉を見つめた。



っ…… 



このままドアをぶち破って、いっそ無理矢理パリに連れて行ってしまおうか…。


だが───



「っ……今まで悪かったっ…」




「っ……」




「許せっ……」




もう無理矢理にこっちを向かせるような事はしたくない───




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