近くて甘い
第37章 立つ悪女は後を濁す
その場にいるみんなが、要さんの言葉を待っている。
それを察したのか、要さんは、周りを見渡して、首をゆっくりと振った。
「ここでは言えませんっ…」
「言って下さいっ!何ですかっ…」
「っ……一生言うつもりのなかったことですっ…」
「何を…ですかっ…」
今度は私が要さんの方に迫ると、要は口を開いた。
「以前…真希さんも櫻井に媚薬を盛られました…」
「えっ…?そんな一体っ───」
いつ…?と言いかけて私は口に手を当てた。
────────これ…社長からの差し入れです…
チョコレートと共に不自然すぎる笑顔で現れた香純さん…
そう…あれは…
確か要さんに英語を教えてもらう日だった…
私は、あれを食べてから…
「記憶がないと…そうおっしゃっていた日がありましたが…その日のことです…」