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近くて甘い

第37章 立つ悪女は後を濁す

「加奈子さんにっ…謝ってください!」




突然聞こえてきた少女の声に香純ははぁっと溜め息をついて、振り返った。



「そしてっ…要さんにも、謝って下さい!!!」




小さな身体で必死にそう訴えてくる真希。




その後ろには、静かな怒りに満ちた眼差しで香純を見つめている要の姿があった。





「あら…お久しぶりです…」





わざとらしく丁寧に言葉を返した香純に真希は大きく眼を見開いた。




ドジでどうしようもない加奈子よりも、こういう清純派を気取っている女が1番癪に障る……





「あなたのことっ…私は許しませんっ…!みんなの気持ちを弄んでっ…」



「………もうご心配なさらないで?私はここをやめますから。もう社長にも興味はありません。私、あなたに間違われて、本当に不快なんです…」




ジリジリと真希に近付いた香純は、自分より小さな真希を見下ろしてニコッと笑った。





「私の良さに気付かない男なんて、もうどうでもいい…


どう見たってあなたなんかより、私の方が良い女なのに…ね?」




根っからの悪女…




男は、自分を飾るアクセサリー程度のものでしかない。



香純の中での1番は、いつでも自分だ。






「────中々面白いことを言うな」



「いたっ…ちょっとなんですかっ!?」





呆気に取られている真希の脇から、要は香純の腕を強めに掴んだ。

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