近くて甘い
第37章 立つ悪女は後を濁す
黒髪から妖艶なマスクがのぞく。
目を見開いた真希は、渡されたチケットを受け取ってジッと見つめた。
まだ戸惑いを見せる彼女の表情を見て、要は、呆れたような顔をしながら微笑んだ。
社長といい、彼女といい…本当に焦れったい二人だ───
「空港には使いが待っています…
社長のホテルまで着けば酒田がいると思うのでそしたら…」
「ありがとうございますっ…」
ようやく笑みを見せた真希のことをみて、要は少しドキッとした。
良かった…
彼女が…また笑えて…。
「真希ちゃん気を付けてね」
「はいっ…」
「しっかり誤解を解いて下さいよ?」
「分かりましたっ…」
ようやく笑顔が戻った三人。
チラと加奈子の事をみた要はニヤリと笑う。