近くて甘い
第37章 立つ悪女は後を濁す
スッと封筒から取り出したものを要は真希に差し出した。
「いつも社長ばかりがあなたの事を追い掛けていますから…」
「─────…」
加奈子は要の手の中のものを見て、ハッと息を飲んだ。
これはっ…
「たまには、あなたが社長を追い掛けてみてはいかがですか…?」
「えっ…」
渡されたパリ行きの飛行機のチケット。
震える手でそれを掴もうとした真希は一度躊躇して顔を上げた。
「でっでもっ…お仕事で行っているならそんな私が行ったら迷惑だしっ…あと一週間とちょっと待っていれば───」
「真希さん!!」
グッと押し付けるようにチケットを差し出した要は、真希を正すように名前を呼ぶとはぁっと大げさに溜め息をついた。
「いい加減にしないと…怒りますよ?」
「っ……──」