近くて甘い
第37章 立つ悪女は後を濁す
「説教しにきたなら早くどっか行って」
荷造りを再開させた香純は微かに胸の痛みを感じた。
っ…ばかばかしいっ…
こんなこと何でもないのにっ…
「それでも…私は友だちだと思ってる──…」
空耳…?
藍の方に思わずバッと身体を向けた香純は、クッキーの袋を渡されてそれを掴んだ。
「加奈子もきっとそう…
じゃなきゃ、こんなにクッキー作ってこないよ…」
「っ……」
「なんかあったら連絡して…。それじゃ」
立ち去っていく藍の背中を香純は目を細めて見つめたあと、手の中にあるクッキーの袋に視線を落とした。