テキストサイズ

近くて甘い

第38章 花の都は恋の街

セーヌ川のほとり。


恋人たちが微笑みながら、愛を語らう…




何の気なしにあるカップルを見ていた光瑠はそのカップルたちが人目を憚ることなく唇を重ね出したのを見て慌てて視線をそらした。




「社長…?」


「ん?あっ…ああ…」




身体は日本から遠く離れたとしても、心が着いてこない。




こちらに来てからずっと上の空の様子である光瑠に酒田は溜め息をついた。




以前来たときも社長はずっと心ここにあらずだった…




「中々上手くいかないな…」



「そうですね…彼女は気まぐれで有名ですから」





パリの有名デザイナーへの依頼。



プロジェクト“Espoir(エスポワール)”の顔ともなるロゴなのだが…





─────────『あなたから、Espoir〈希望〉を感じないから、いまいち浮かばないのよね…』





必ず依頼者と顔を合わせてからデザインを決めるという彼女は、光瑠と顔を合わせたとき、そう言って溜め息をついてしまった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ