近くて甘い
第38章 花の都は恋の街
当たり前だ…
今の自分に希望などない。
頭の中では、ずっと夢でみた真希と要の幸せな光景が広がっている…
っ……
以前真希が光瑠の元を去ったとき、怒りに満ちていたが、今はどうしようもないほどの孤独への恐怖が光瑠を襲っていた。
「今、あちらは夕方です。関根さんに電話をしてみましょうか…」
「っ…待てっ…」
電話を掛けようとした酒田のことを光瑠は無意識に止めた。
会社の様子を聞くだけだとは分かっていても、割り切れないでいる自分に光瑠は唇を噛んだ。
真希はもう家を出てしまったのだろうか…
帰っても、誰も出迎えないのだろうか…
『あぁっ!ひかるおかえり!お土産は??』
やたらと足にくっついてくるあの少年も…
『やだっ…光瑠さんひどいくまじゃないですかっ…身体壊したらどうするんですかっ…!!』
口うるさくて、そしてどうしようもなく愛しい彼女も…