近くて甘い
第38章 花の都は恋の街
「あ…っと…」
アリーヌにネクタイを掴まれながら、光瑠は愛想笑いをしていた。
酒田は一体どこに行ったっ…
フランス語はもちろん、英語すら全く話せない光瑠は冷や汗をかきながらアリーヌの言葉を聞く。
ったく何なんだっ…!
俺は日本人だっ!日本語で話せっ!!
そんな傲慢なことを心で思いながらも、光瑠は笑顔を崩さない。
諦めて、ただただ酒田の帰りの待っていたら、突然グッと身体を押されて光瑠は座りながら、身体を少し後ろに反らした。
「光瑠さんに触らないで下さいっ!!」
「っ…」
ここで聞くはずのない声──…
同じように身体を押されたアリーヌはビックリしながら、その小さな少女のことを見つめていた。