近くて甘い
第40章 Tout Hotelでお食事を
確かに…
ここはパリ…──
酒田の目を気にしなければ真希と二人で…
ハッとした光瑠は頭を激しく振った。
マズいっ…
また流されるところだったっ…
「だからっ…あいつがいなければ言葉がっ…」
「光瑠さんと二人きりでどこかに行ったことないし…行ってみたいなぁ…なんて…」
「っ……」
甘い甘い…
愛する人からの誘い…───
「……ね?光瑠さん?」
唇を噛んだ光瑠は、微かに震えるとハァアッと深く溜め息をついた。
「……っ…酒田!」
「はいっ!なんでしょうかっ!」
「……今日はついて来なくていい…っ」
有川商事の決定権は、
社長が持っているのではない。
驚いた酒田は嬉しそうに目を輝かせたあと、光瑠に近付いた。
「えっ…?でもっ…通訳は───」
「だからっ…いいと言ってるだろうがっ!!」
っ……
こいつがいなかったらっ…
マズいっ…!
喜ぶ酒田を見ながら、光瑠はパニックになっていた…