近くて甘い
第47章 淡くて儚い
「………要くん…」
閉館時間を過ぎたころ、すっかり眠ってしまっている要の前に恵美は立って、彼の名前を呼びかけた。
15歳とは思えないほど、身体が大きくて、落ち着いている。
そしてその精悍な顔立ち。
スー…と静かな寝息を立てる要の頰に触れようと恵美は手を伸ばした。
そして、起きそうにない要を見て、小さく溜め息を洩らす。
「要くん…要くんってば…」
頰に触れようと伸ばした手を要の肩にずらして、恵美は要を揺さぶった。
俯いている彼の顔を覗き込むようにして、顔を近付ける。
すると、丁度、要が目を覚ましたので恵美は慌てて近付けていた顔を遠ざけた。