近くて甘い
第47章 淡くて儚い
「今日はもう…」
「まだ大丈夫です」
首筋を這う舌に、恵美は声を漏らしながら、ありったけの力で要から身体を離した。
「……先生?」
黒髪の下で
まっすぐな瞳が光る。
「……お願い…今日は…もうっ…」
「……………」
拒否…された…?
少しそのことに戸惑いながら、要はしばらく固まった後、恵美に笑顔を見せた。
「分かりました…」
少し…暴走しすぎた…
反省しながら、要はシャツの襟を整えた。
「では…また」
「ええ…」
彼女は、そういって微笑んだ。
なのに…
彼女は要に黙って
姿を消した。
夢だったのかと疑うほど
淡くて…
儚い…
過去の記憶─────