近くて甘い
第48章 想いは混ざる
────────田部は本当におもしろいな…
脳裏で爽やかに微笑む要副社長の姿に、加奈子は、ハルから視線を反らせた。
「……ダメなの…」
今までだって、何度も諦めようと思った。
分不相応なのも分かってる…
でも…
「何がダメなんだよ」
「ダメなの…」
「だから何──」
強く言い返そうとした春人は、加奈子の頰に流れる静かな涙を見て、言葉を止めた。
「っ…おい…なんでお前泣い──」
「どうしても出来ないの…。
前に進みたくない訳じゃないの…。
でも、でもっ…やっぱ…」
視線の先には彼がいて…
彼の声を聞くと胸が弾んで…
クッキーを焼いているだけで幸せで…
「……彼の横顔が…」
たとえ、自分のことを見ていなくても…
でも…
私はその横顔が──…