近くて甘い
第49章 逃げ道
スマホの画面を見ながら、酒田は深く溜め息をついた。
朝撫で付けたばかりの髪が、はらりと束になって額に垂れる。
これはまた厄介だ…。
どうしようかと考えているさなか、笑顔を振り撒いて登場した要の姿に酒田は希望の光りを見いだしたかのように、目をキラキラとさせた。
「関根さんっ!」
「なんだ朝から大きな声を出して」
ぐっと腕を掴まれた要は、酒田のその強引な姿に目を見張る。
「少し、お話…というか、ご相談というか…報告…というか…」
「まどろっこしい言い方をするな…言いたいことがあるなら言え…」
「すみません…」
あはは、と作り笑いのような笑みを見せた酒田に嫌な予感を感じながら要は自身のオフィスの扉を開けた。
「……それで?」
「えっと…真希さんの事なんですが…」
「真希さん?真希さんがどうかしたのか?」
先ほどを態度を一転させた要のことをみて、酒田は、はぁ…と間抜けな返事を返した。
「今朝、メールが来まして…」
「メール?真希さんから?お前にか??」
「っ…そう怖い顔をしないで下さいっ…」