近くて甘い
第49章 逃げ道
ハッとした要は、自分の表情が強ばっていることに気付いて慌てて酒田に背を向けた。
メールくらいで何を…
相手は酒田だ…これくらいで、心を乱すんじゃ、社長と変わらないじゃないか…
「……で、なんだ」
コートをかけた要は自身のデスクに腰をかける。
「いやぁ…それが…真希さん、高校を卒業したら英語を学ぶために専門学校に行きたいらしくて…」
「専門学校!?」
驚きで声を上げた要は、思わず背もたれから身体を離した。
そんなことっ…社長が許すはずが…
「あぁ…」
察したように要は静かに声を発して再び背もたれに背を付けた。
「……ご察しの通り、それを昨夜社長に伝えたらしく…」
「社長は今日はご乱心…ということか」
「そういうことです…」
ふぅと溜め息をついた要は腕を組んで軽く唇を噛んだ。
一年間、高校に行かせるだけであの乱れようだったのだ…
あともう二年もそれが加わるとなったら…それは当たり前のことだ。
「……結婚は…?先延ばしか?」
「いえ、結婚は約束通り高校を卒業したらされるようです…」
「…そうか」