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近くて甘い

第49章 逃げ道

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制服のスカートをハンガーにかけながら、加奈子は今日の要のことを思い出していた。



─────もう…クッキーはいらないよ



冷たく放たれた言葉は、加奈子の頭の中をずっと駆け巡っている。


あんなに冷たい副社長は初めてだった…。


少し怒ったような…あの声…


どうして…どうして今日に限って副社長はあんな…。



「かなぁ…」


か弱い春人の声にハッとした加奈子は、背筋を伸ばすと、はぁいと返事をして春人の元へと急いだ。




「どうかした…?」


「あぁ…うん、ごめん、水一杯くれる?」


「水ね…分かった」


額に熱さまシートを貼りながら、そう弱々しく言った春人は、ちょこちょこと駆け出す加奈子の背後をジッと見つめるとその身体をゆっくりと起こした。



「はい、これ…」


「ん…さんきゅ」



錠剤を口に含んだ春人は、そのまま加奈子が持ってきたコップに口をつけ、薬を飲み込んだ。



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