近くて甘い
第49章 逃げ道
「まったく…」
やれやれと言わんばかりに要は二人が唇を重ねるのを見てすぐに目を反らした。
「よっ、良かったですねっ…」
顔を真っ赤にさせた酒田も目を反らしてそんなことを言った。
「茶番だな…傍(はた)から見れば、一連の騒動は、じゃれているようにしか見えない…」
呆れた要の言葉に、酒田はそうですね…と言葉を返してアハハと笑った。
「まぁ…幸せそうでなによりだ…」
そう言いながら、要は、昼間の加奈子のことを思い出していた。
みんな…前に進んでいる…
─────────要くんっ…
恵美の声が頭の中で響く…
自分は…一体…
切なげに呟いた要の横顔を酒田はジッと見つめた。
「行きましょうか…お邪魔ですし…」
「そう…だな…」
微笑み合う二人の事を見ながら、要は、酒田と共にその場から立ち去った。