近くて甘い
第49章 逃げ道
唇を離した恵美は、じっと要の瞳を見つめた。
「要くん…
お願い…
抱いて…」
彼女は以前と同じように囁く。
どうなっても…もう構わない…
「きゃっ…んんっ」
衝動的に恵美の唇を塞いだ要は、そのまま部屋へと彼女を連れ込んで行った。
「はぁっ…要くんっ…」
妖艶に息を洩らす恵美とは裏腹、要は何故か冷静にこの状況を受け入れていた。
真希の微笑んだ顔が浮かんですぐに消える。
だが…
────────要副社長ー!
躓きそうになりながら、自分の元へと走ってきた加奈子の顔が、中々消えない──…
「あっ…要くっ…」
「っ…はぁっ…」
息が段々と荒くなってゆく──…
恵美という逃げ場を見付けて、要は必死に胸を痛みを誤摩化していた…