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この前、近くて遠くて、人を拾いました!?

第1章 支度 (近くて遠い)

懐中時計が揺れる──…



それに合わせるかのように貧乏揺すりをするのは、


この家の当主で有川商事社長、有川光瑠である。



「社長…女性の支度は時間が掛かるものです。」



ニコリと笑いながらそう光瑠に伝えたのは元社長秘書、現有川商事副社長、関根要だ。



「にしても遅すぎるっ…!」



ネクタイを少し緩めた光瑠は苛立ちを抑えられない。


何かとワガママで偉そう…
それが有川光瑠の特徴である。



「大体俺はパーティーなんて浮わついた物は大嫌いだ!」



慣れないグレーのスーツ…。人のパーティーだからと古畑が用意したものだ。



「そんなこと言ったって仕方ありませんよ…招待状が来ていたし、邪険に出来る相手でもありませんから…」



現社長秘書、酒田の言葉に光瑠はチッと舌打ちをすると、要が肩をすくめて緩くため息をついた。



「大袈裟に大嫌いだとおっしゃりますけど、逆に社長は好きなものの方が少ないでしょ…」


「確かに…」



酒田が同調してはははと笑う。



「そんなことはないっ!勝手な事を言うなっ!」


「じゃあおっしゃってみてください、好きなものを。」



けしかけるように言った要を見て、光瑠が口を開く。

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