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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

「私の母の姉がこの花やの内儀(おかみ)です。両親があい次いで亡くなった時、私はまだ十四でした。行き場のない私を、伯母さんと伯父さんが引き取ってくれたんです。丁度子どもがいなかったから、養女にするって。嘉門さまと初めてお逢いした二年半前のあの雨の日は、私はたまたま伯母さんの家―ここに遊びに来ていて、店番をしておりました」
 今のお都弥の話で、欠けた皿のその肝心の欠けた部分が漸く見つかったような気がした。これで、すべてがおさまるべき場所におさまり、一枚の皿が完成したのだ。

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