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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

「これは、何を書いているのだろうか。恥ずかしいが、俺には皆目判らぬ。何かの歌―和歌であろうことくらいは察しがつくが」
 嘉門が自己嫌悪に浸りながら言うと、娘が涼やかな声で応える。
「恋の歌です。ひたむきな恋心を一生懸命隠していたのに、いつのまにか、その恋心が顔色や表情にまで出るようになってしまい、他の人からどうしたのかと訊ねられるようになった―、と、そんな意味でしょうか」
「―」

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