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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

―母上、その三条家の姫との縁談と申すのは、いかなることか。この私の方こそがお伺いいたしとうございます。私は、そのような話、一切お聞きいたしてはおりませぬぞ。
 松平の伯父上というのは、母方の伯父、つまり、現松平家の当主である親矩(ちかのり)だ。親矩はは現在、筆頭老中の座にある。その権力はかつての父親嘉を凌ぐともいわれ、将軍のお憶えもめでたく、時の権力者として時めいていた。

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