両親へのプレゼント
第4章 彼女への嘘
私は彼女のところへ戻ると、
「お待たせしました。お部屋をご用意させていただきすよ」と言ったのだ。
「でも、さっき満室とお聞きしましたけど...」
と彼女が不安そうに言ったため、
「先ほど、予約事務所に行って確認をしたら、1件キャンセルをしていないのがあったので、大丈夫ですよ」と咄嗟に嘘をついた。
「ありがとうございます。本来なら嬉しいのですが....」と彼女が言うと、
「どうかされましたか?」と私は聞いた。
「実は、こちらのホテルがそんなに料金がかかると思っていなかったもので、恥ずかしいのですが、25,000円少々しかないのです。今回は他のホテルも満室のようなので諦めます。次回はお金を貯めてから来たいと思います。今までいろいろと調べて頂き、ありがとうございました」と彼女は礼を言い、立ち去ろうとした。
「お客様、お待ち下さい。確かにパンフレットに提示している料金が3万円からというのは本当です。しかし、今回だけ特別に2名様、25,000円で結構です。もちろん、税金も含まれていますのでご安心下さい。その日は、あなたのご両親の結婚記念日ですから」
と私は上司に相談をせずに即答をしてしまったのだ。
彼女は信じられないような顔をして、
「ほんとうにありがとうございます」
と言って、頭を深く下げた。
その時に初めて、私はまだ彼女の名前、連絡先を聞いていなかったことに気付き、その場で確認をした。
彼女の名前は、小池梨奈、高校1年生である。
そして、予約時の名前は父親の小池洋と聞き、私はポケットに入れていたメモ帳に名前と彼女の自宅の電話番号を控えた。