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ショートラブストーリー

第7章 高橋②

「みどりさん!?」

わざと低い声で呼ぶと、ばつの悪そうな顔になり

「で、でもね!!てっきりそうだと思う場面に遭遇したんだからしょうがないじゃない」

「場面?」

何の事か思い当たらなくて首をかしげた。

「真由美ちゃんが他の男と一緒に買い物してたの!!」

「…へぇ…で?」

まさかそれだけの事で別れたと思い込んだのか!?

「で?って…平気なの!?」

「買い物だけなら友達とかとでも行くでしょ。そんなおおごとですか?」

「だって見かけたの、スーパーの食品売り場よ!?今晩何しようとか人参嫌いだから入れるなとか話ながら食材選んでたのよ!?」

みどりさん…それ、『見かけた』じゃねーだろ。ガン見してたのかよ。

「あ、そりゃその日は当然手作り料理振る舞ってるわな」

「でしょ!?じゃなきゃ人参入れるなとかは言わないよね」

オーナーとみどりさんはやけに楽しそうに盛り上がってる。

…ったく。この兄妹は。

俺が軽いため息をつくと、喜美子さんが慌てて

「あ、でも!!ただ手料理御馳走しただけかもしれないし。真由美ちゃん、料理上手そうだもんね?どう?高橋くん」

「んー。俺、まだ料理作ってもらったこと無いから分かんないっす」

一瞬の、間。

「そりゃあ…確実だろ」

オーナーがぽつりと呟いた。

何が?

「気を強く持ってね。ファイト!!」

みどりさんが両手で握りこぶしを作ってエールを贈る。

それを見た喜美子さんが、悲しそうな顔で俺を見てる。

だから、何なんだよ!?

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