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ショートラブストーリー

第8章 美帆(みほ)①

「お前、課長の事、好きなの?」

階段ですれ違い様に言われて、あたしは驚いて振り返った。

「倉田さん!?」

同じ営業部の倉田さんが、足を止めてこっちを見ている。

「なっ…何言ってるんですか!?」

突然言い当てられて、上手く言い返せなくなったあたしに、倉田さんは笑いを浮かべて

「やっぱ図星か」

「ち…違っ…」

「否定しても、見てりゃ分かるんだよ。お前、バレバレ」

あ、まずい。

自分でも顔が赤くなってくのが分かる。

「…だったら、何ですか!?」

「わ、逆ギレ?」

キレさせたのは誰だっての!!

倉田さんは大げさに恐がる素振りを見せると、そのまま階段を昇って行こうとする。

「待って!!」

咄嗟に倉田さんの腕をつかんで引き留めようとして…

ブチッ、コン…コン…コン…

上着の袖口のボタンが飛び、階段を転がっていった。

「あ…ごめんなさい!!」

慌ててボタンを追いかけて、踊り場までかけ降りる。

「ありました!!」

ボタンを拾って振り向くと、手すりに頬杖して見ている倉田さんと目があった。

「さんきゅ。そのまま持ってきて」

言われなくてもそうします!!

ちょっといらっとしながら、ボタンを渡しに階段を昇る。

差し出された右手の袖。ボタンが付いてた場所から糸が飛び出してる。

「…あの!!」

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