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ショートラブストーリー

第8章 美帆(みほ)①

「…出来ました」

空いていたミーティングルームで、倉田さんのボタンを縫い付けてあげた。

「昼休みの貴重な時間に悪いな。おー、ありがとう。上手いもんだな」

倉田さんはボタンの縫い目を見ながら感心したように言った。

「それ…ソーイングセットっての?持ち歩いてる子、初めて見たかも」

「そうですか!?」

「何?女子力アップ作戦!?」

褒められたと思ったのに!!どうしてこういう言い方するのかな。

「違います!!…あたし、よく引っかけたりするから…」

「何だ。ガサツなのか」

「ガサツ…!?」

ちょっと!!酷くない!?

「んで?ボタン引きちぎってまで引き留めた理由は?」

上着を着て、倉田さんがあたしをちらりと見る。

「…課長の事…内緒にしてもらえませんか…?」

完全に片想いだけど。

この気持ちを、からかう材料にされたくない。

「…そんな話、誰にしても俺の得にならねぇよ」

「え!?…じゃあ…」

頬が緩んだあたしに、

「それに、お前の態度見てりゃ言いふらさなくてもバレんぞ!?」

「…はい…」

冷たい一撃が落ちる。

「本気で好きなら、まずは仕事頑張って課長に認めてもらえ。」

「え…?」

「まともに仕事出来ない奴なんか、好きになる訳ねぇだろ?」

「はぁ…」

何なの!?倉田さんってば、どうしちゃったの!?

ぽかんとしたあたしに、眉をしかめると

「…って…お前じゃ無理かもな」

はぁ!?

「倉田さん!?」

「ま、見限られん程度に頑張れよ」

ぽん、と頭を小突かれて、よろめいてる隙に、倉田さんは部屋を出ていった。

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