テキストサイズ

ショートラブストーリー

第9章 貴史

「あ!!貴史、いい所で会った」

振り向くと、一年の時に同じクラスだった榊原がいた。

「何か用か?」

「貴史さ、彼女出来たんだって?」

唐突な言葉に、俺は戸惑いを表に出さないよう努めた。

「誰から聞いた?」

「うちの部の女の子が言っててさ」

あぁ…こいつ、料理部の部長だったな。

しかし、こいつは部活しながらそんな噂話に付き合ってるのか。

「…ってことは事実か。おめでとう!!」

満面の笑みで肩をバシバシ叩かれて…何だろう。喜ぶべき、なのか?

「人の事はほっとけよ。…お前は?彼女出来たのか?」

少しだけ嫌みを込めて聞くと、何故か顔を赤らめて

「いや~、彼女ってとこまではいかないんだけどさ、前よりは近くなってるかな~って感じで」

へぇ。一年の時は色恋ゼロみたいに見えたのに。

「…まぁ、上手くやれよ」

「サンキュー!!何かあったら相談するな」

「断る」

「冷てぇ!!」

そう言いながらも楽しげに笑ってる。

本当、いい性格してるよな。

「あ、そうだ。お祝いにこれやるよ」

鞄から包みを取り出すと、俺に突きつけた。反射的に受け取るものの

「何だよ。貰い物か?」

可愛いイラストのセロハン紙で包まれて、ご丁寧にピンクのリボンがかけてある。

「手作りっぽいし、他人にやっていいのか?」

「あ、いいよ。作ったの俺だし」

お前かよ!?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ