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ショートラブストーリー

第9章 貴史

更にその後―

「たかちゃん、お願い!!」

相変わらず、美夜子の宿題の面倒を見る日々が続いていた。

「はいはい。分かったよ」

「ありがと。たかちゃん、大好き♪」

「……」

これも相変わらずで。

敢えて無視していると、不機嫌な声をあげた。

「…ねぇ、何か返事してよ」

「はぁ!?」

「こないだは言ってくれたのにな~」

ため息混じりに呟かれて…ため息付きたいのはこっちだって。

「…そんな簡単に言うかよ」

「もう!!」

美夜子がパンチする真似をして、俺に拳を向ける。

片手でそれを受け止めると、

「美夜子さん、これ、何?」

「あっ…!!」

「人にもの頼む態度じゃねぇよな!?」

「あ、ごめん!!ごめんってば!!冗談!!」

もう片方の手も掴むと、片手で美夜子の両手を封じ込める。

空いた右手を美夜子の顔に近付けると、デコピンされると思ったのか、ぎゅっと目を瞑った。

…あ、その顔。

瞼をピクピク震わせて…あの時の顔に似てる。

思わず笑いを浮かべると、美夜子がうっすらと目を開けて俺の様子を窺ってきた。

「目、閉じとけよ」

俺の言葉に、再びぎゅっと目を瞑る。

全く…無防備と言うか、されるがままと言うか…

どうしようもない奴。だけど…

「好きだ」

耳元で囁いて、驚いて目を見開いた美夜子の唇をふさいだ。



おわり

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