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ショートラブストーリー

第10章 美帆②

「北方さんは鳴尾線利用してるの?」

「はい」

「家はどこが最寄り駅なのかな」

「藤池です」

「藤池…って、四つ目?」

「あ、惜しいです。五つ目ですよ」

緊張してるのが分かるのか、課長は何気ない会話でほぐしてくれる。

駅までそんなに遠くないから、もうすぐお別れなのかと思うと、この時間が貴重に思えてきた。

「北方さん、独り暮らしだよね」

「はい」

「夕食、今日は何にするの?」

「えー、特に考えてないんで…。帰りにスーパー寄って決めようかな、と」

「偉いね。自分で作るんだ」

わ。褒められた。ちょっと照れちゃうなぁ。

「そんな大したものは作れませんけど…一人で食べに行く気にならなくて」

「そうなんだよな。外食は誰かと一緒じゃないとつまらないんだよな」

「あ、分かります」

「空腹満たすだけならコンビニ弁当が気軽だし」

「でもそればっかりだと体に悪いですよ」

あたしの言葉にくすっと笑みをこぼす。

…ほんとにかっこいい…!!オトナだなぁ。

思わず頬が緩み…窓ガラスに写る自分の顔に気を引き閉めてると、その先の景色が見慣れている建物を通過していく所だった。

「…あれ?課長、駅…」

利用している駅が背後に流れていくのをぽかんと見つめていると

「せっかくだから、夕飯食べに行こう」

「え!?」

課長の顔を見ると…笑ってる。

「北方さんとご飯食べてみたいんだけど…嫌?」

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