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ショートラブストーリー

第10章 美帆②

駐車場に着いて。

課長に案内されるまま、一台の車に近づいていく。

あ、課長、こういう車に乗ってるんだ。

黒色のRVR。何か、かっこいい感じ。

キーレスエントリーが作動して、サイドミラーが点滅する。

課長は助手席のドアを開けて、あたしに微笑みながら

「乗って。送るよ」

と囁いた。

「…え!?いいです、大丈夫です!!」

「変な遠慮しなくていいから」

遠慮じゃなくて。あたしの心臓がもたないから!!

「ここまで送ってくれたのに、置き去りにして車で立ち去る真似は出来ないし」

そうだよね。課長、優しいもん。

「ほら、乗りなさい」

「…はい。ありがとうございます」

せっかくそう言ってくれてるし、断るのも変だよね。

駅まで、お願いしよう。

そう覚悟を決めて、課長の車に乗り込む。

課長は助手席のドアを優しく閉めて、運転席に回ると素早く乗り込んだ。

この位置…何か落ち着かない。中途半端な近さでソワソワする…。

「北方さん」

「はっ…はい!!」

「シートベルト、締めて」

あ、忘れてた。

慌ててベルトを伸ばすも…あれ!?どこに差すの!?

焦ってるあたしを見て、課長はくっくっ…と喉の奥で笑うと

「こっちだよ」

と、あたしの手ごと掴んで、シートベルトを締めてくれた。

カチャン、と音がして、課長の手が離れる。

…どうしよう。顔、見れないよ。

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