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ショートラブストーリー

第10章 美帆②

からかうためにキスしたの?

行為の真意を問いたいのに。

聞いてどうするの?

心のどこかでそんな思いも生まれていて。

「それに…そういうのは、好きあってる二人がするもんだと思います」

だから倉田さんとは無いでしょ?

言葉の裏に込めた気持ちに気付いたのか、倉田さんは笑いを止めて、あたしをじっと見た。

「…じゃあ、課長にもらってもらえ」

「え」

「…お前さえその気なら、どうにでもなるだろ」

あたし、振られたんだけど!?

それでもまだ『どうにでもなる』んですか!?

眉をひそめたあたしに、片方の唇だけ上げて笑うと

「ま、初めてで不安なら練習台になってやるし」

はぁ!?

「練習って…」

「処女はめんどくさい、って前に言ったろ?」

あたしの頬を指先でスッと撫でて、そのまま指一本で顎を上げられた。

「本番前に、自信、付くかもしんねーぞ」

覗き込むように見つめられて…。

何なのよ!!その上から目線は!!

「……結構です!!」

指を払い除けて倉田さんを睨み付けた。




美帆がいなくなった資料室で、倉田はため息をついた。

「だから。結構です、は返事になんねぇんだってーの」

しばらくすると、フッと短く息をつき、口の端を上げて呟いた。

「1ヶ月が勝負か…」



ひとまず、終わり

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