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ショートラブストーリー

第11章 美帆③

「平谷課長、遅くなってスミマセン」

倉田は宴会場に入ると、平谷課長の前に座った。

「あぁ、御苦労様。どうだった?」

「今のところはまだ大した動きは。社長が平谷課長の異動を悲しんでましたよ」

「社長には色々世話になったからな」

倉田がお銚子を手に取り、課長に注ぐ。

「まぁ、後のフォローは俺がきっちり務めますから」

「言うなぁ。…倉田なら任せても安心だよ」

「はい」

お互い顔を見合わせて笑う。

「倉田も飲めよ」

「あ、じゃあ俺はビールを」

平谷課長が空いたグラスを差し出してビールを注ぐ。

「課長、お疲れ様でした」

「ありがとう」

くっと一息で飲み干すと、課長の隣の空席を見て、

「そういえば稗田さんは?」

「さぁ…。トイレか煙草じゃないか?」

「そうですか…」

倉田は課長の盃にお酌しながら、

「実は、課長に相談があるんです。個人的な話なんですが…」

と話を切り出した。

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